『無許可業者と建設工事契約は有効?判例から学ぶリスクと注意点』

建設工事を発注する際、受注者が建設業法上の「許可業者」であるか否かは、法的トラブルを避けるために非常に重要なポイントです。特に、許可を有しない業者と締結した請負契約が私法上で有効かどうかが、争点になるケースが少なくありません。
この記事では、無許可業者との請負契約の有効性について判断が示された2つの判例を紹介し、契約の実効性についてわかりやすく解説します。
建設業法と請負契約の関係
建設業法の目的
建設業法第1条には、以下の目的が定められています。
建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化を図り、建設工事の適正な施工を確保するとともに、発注者を保護し、建設業の健全な発達を促進し、公共の福祉の増進に寄与すること。
このように建設業法は、主に公共的利益や発注者の保護を目的としており、無許可営業に対しては厳しい規制が設けられています。
判例1:東京高裁 昭和51年5月27日
東京高等裁判所は、以下のような判断を示しています。
建設業法は、無許可での営業行為を行政的に取り締まるための「取締法規」であり、無許可営業による請負契約が私法上無効になるとは解されない。
この判例では、建設業法違反が即座に請負契約の無効につながるものではないことが示されました。
ポイント:
- 無許可業者との契約であっても、契約自体が直ちに無効となるわけではない。
- 建設業法は行政的な取り締まりを目的とし、私法上の契約効力までは否定していない。
判例2:東京地裁 平成24年2月3日
より新しい東京地方裁判所の判例も同様の立場を示しています。
建設業法第3条の許可規定は無許可営業を刑罰により取り締まるための規定であり、請負契約の私法上の効力までは否定しない。
この判例も、先の高裁判決と同じく「無許可営業=契約無効」とはならない立場を取っています。
建設業法第29条の3の規定について
建設業法第29条の3には次の規定があります。
許可が失効または取消された場合でも、その前に締結された請負契約に係る建設工事は施工可能である。ただし、失効または取消後2週間以内にその旨を発注者に通知する義務がある。
この条文からも分かるように、一定の条件下では許可がなくなっても工事の継続は可能です。つまり、過去に締結された契約の効力は一定の範囲で保護されています。
結論:無許可業者との契約は「原則として有効」だが注意が必要
ここまでの判例と法令を踏まえると以下のように整理できます。
- 無許可業者との請負契約は原則として私法上有効である。
- 建設業法違反は、契約の効力自体を即座に否定するものではない。
- ただし、発注者保護や社会的信用の観点からリスクが伴う。
実務上の注意点
- 発注時に必ず「建設業許可番号」を確認すること。
- 許可の有無によってトラブル時の保険対応やリスクが大きく変わる。
- 無許可業者との契約は有効だが、法的・社会的リスクが高いため慎重な判断が必要。
【まとめ】リスクを避けるためには
許可を持たない業者との契約は、トラブル発生のリスクが高いため、事前に業者の許可の有無をしっかり確認し、慎重に判断することが重要です。