建設業の請負契約とは?雇用契約・委任契約との違いと一人親方問題の現状

建設業における契約形態は、「請負契約」を前提としています。しかし、雇用契約や委任契約との違いを理解していないと、偽装一人親方の問題が生じる可能性があります。本記事では、建設業における請負契約の特徴や、一人親方の課題について詳しく解説します。
1. 建設業における契約の種類
建設業では、契約形態として以下の3つが考えられます。
1-1. 雇用契約(民法第623条)
雇用契約は、民法第623条で定められており、「労働に従事すること」が要件です。仕事の完成を求められるわけではなく、労働力を提供する契約です。
1-2. 委任契約(民法第643条)
委任契約は、特定の法律行為を「委託(依頼)」し、相手がそれを「承諾」することで成立します。こちらも成果物の完成を前提としない契約である点が特徴です。
1-3. 請負契約(民法第632条)
請負契約は、「仕事を完成する」ことを前提とする契約で、建設業法第2条第2項にあるように「建設工事の完成を請け負う営業」を基本としています。つまり、建設業における契約は請負契約が前提となります。
2. 偽装一人親方とは?請負契約の問題点
2-1. 一人親方の定義
例えば、三次下請の位置に一人親方(個人事業主)がいる場合、その一人親方は「請け負った工事に対し、自らの技能と責任で完成させることができる現場作業に従事する個人事業主」である必要があります(令和4年3月9日開催「第6回建設業の一人親方問題に関する検討会」より)。
2-2. 偽装一人親方の問題点
しかし、実態として雇用契約に近いにもかかわらず、請負契約として扱われているケース(偽装一人親方問題)が多発しています。これは以下のような状況で発生します。
- 事業主が労働時間や仕事の進め方を細かく指示している
- 工具や材料がすべて事業主から支給されている
- 請負契約の形式をとっているが、実態は労働契約に近い
このようなケースでは、雇用契約とみなされ、社会保険の未加入問題や労働者保護の欠如が生じるリスクがあります。
3. 建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入による対策
3-1. CCUSとは?
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者の登録管理を行うシステムであり、一人親方の適正な登録を促進する役割を果たします。
3-2. CCUSによる偽装一人親方の防止策
CCUSの技能者登録時には、所属事業者との紐付けが必須です。そのため、
- 偽装一人親方はCCUSに登録できない
- API連携が進んでいることで、現場への入場が制限される
といった仕組みにより、実態と異なる請負契約の防止が進んでいます。
4. まとめ
建設業における請負契約は、仕事の完成を前提とする契約ですが、現場では雇用契約と変わらない形で働く偽装一人親方が問題視されています。CCUSの導入が進むことで、偽装一人親方問題は少しずつ改善の方向に向かっていますが、企業側も適正な契約形態を理解し、適切な対応を取ることが求められます。
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