「500万円未満の工事は無許可でOK? 実情と今後の規制強化」

建設業法の規制と現場の実情
建設業法では、1件の請負代金が500万円未満の工事を請け負う場合、建設業許可が不要とされています。しかし、実際の建設業界では、許可がなくても問題がないとは言い切れません。
例えば、個人の消費者から一軒家のリフォーム工事を直接請け負う場合、リフォーム代金をローンで支払うケースが多くあります。その際、借入を行う銀行は、施工業者の建設業許可の有無や適切な許可業種を確認し、これを融資の可否判断の材料とすることが一般的です。
また、近年では、元請事業者がコンプライアンスの観点から下請業者に建設業許可の取得を求めるケースも増えています。つまり、たとえ500万円未満の工事であっても、金融機関や元請企業の基準により、許可を取得しないと事業の継続が難しくなる可能性があります。
国の対応と規制強化の動向
こうした状況を受け、国土交通省は「軽微な建設工事」のみを請け負う事業者を取り締まるための制度創設を検討し始めています。
本来、軽微な建設工事は「公共の福祉」への影響が少ないことや、小規模事業者の負担軽減を目的として、許可不要とされてきました。しかし、特にリフォーム業界では、施工業者が行政による監視を受けないことを悪用し、消費者とのトラブルが急増しています。そのため、国土交通省は次のような規制強化を検討しています。
- 届出制・登録制の導入:軽微な建設工事を請け負う業者に対し、届出義務を課す。
- 監督権限の強化:違法行為を行った業者の登録を取り消す仕組みを導入。
これらの対策については、平成28年5月23日に開催された「中央建設業審議会・社会資本整備審議会産業文科会建設部会」での議論が参考になります。
住宅リフォーム事業者団体登録制度とは
国による監視体制の一環として、平成26年9月1日から「住宅リフォーム事業者団体登録制度」が開始されました。これは、リフォーム業者の適正な運営を促すための制度であり、国が定めた基準を満たした団体のみが登録されます。
この制度を活用することで、消費者は適正な業者を見極める手がかりを得ることができ、業者側も信頼性を向上させることが可能になります。
さらなる規制強化の可能性
令和5年以降、「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会(第9回)」や「基本問題小委員会(第25回)」などで、さらなる規制強化についての議論が行われています。
具体的には、「建設業許可を要しない小規模工事」についての実態調査や、適切な管理体制の構築が検討されています。これにより、将来的には500万円未満の工事であっても、一定の登録・監督制度が導入される可能性があります。
まとめ
- 現行法では500万円未満の工事に許可は不要だが、実務では許可が求められるケースが多い。
- 金融機関や元請企業のコンプライアンス基準により、許可が必要になることがある。
- 国土交通省は「軽微な建設工事」に対する届出制・登録制の導入を検討している。
- 平成26年から「住宅リフォーム事業者団体登録制度」がスタートし、業者の適正運営が求められている。
- 令和5年以降、建設業許可不要の小規模工事に対する監督強化が進められる可能性が高い。
今後の法改正や業界動向を注視し、適切な対応を取ることが求められます。